着替えて下に降りると、ナルはリビングで新聞を読んでいた。
わー、なんか普通のお父さんみたい!
なんて、ちょっと感動した。
ナルはあたしに気づいてこっちを見たけど、すぐにまた新聞に視線を戻した。
広いリビングの奥にダイニング、それから対面式のキッチン。
うわー!あたし結婚したらこんなキッチンに憧れてたんだよね!
早速朝食作りに取りかかる。
冷蔵庫を一通り覗いたあと、簡単にオムレツとサラダを作ることにした。
あとはトーストを焼くだけ。
「ママー朝ごはんなーにー?」
メイちゃんが嬉しそうな顔をしてあたしの方に駆け寄ってくる。
もー、かわいいな。
改めてみるとこの子、確かにナルとあたしにところどころ似てる。
細くてまっすぐな黒味を帯びた髪、贅沢なほどある睫毛、ぱっちりした瞳はナル譲りだし、
このなつっこい性格とちょっと小さな鼻や口元はあたし譲りなんだろう。
「朝ごはんはねー、オムレツだよ。メイちゃん好き?」
くすくすと笑ってあたしが言うと、
すきー!と大声で返事が返ってきた。
それからメイちゃんは「ケチャップでウサギさんかく!」と宣言して
冷蔵庫からケチャップを取り出し、あたしの隣でスタンバイしている。
なんだか、心に開いた穴がじんわりと塞がっていくような、そんな感覚がした。