チチッ、チチッ、チチッ

枕元で、目覚ましの音がする。
目覚ましなんてかけてたっけ・・・
あたしはまだ眠たい目をうっすらと開けた。







零れ落ちた明日




手探りで目覚ましを止めて、ぼんやりと視界に映ったのは真っ白な天井。
布団の中でひとつ伸びをして、少し寝返りを打つ。
さらさら、とシーツの擦れる音と、体が布団に沈みこむような感覚。
(なんか、きもちーなー)
ぬくぬくとあたしは布団の中で縮こまる。
いつも、布団なんて平べったくて固いものしか使ってないし。
なんか、これ高級そうな布団だな・・・高級なホテルだったらこんなベッドなのかなあー。

と、ここまでぼーっと考えて、あたしはぱちりと目を開けた。
(ちょっとまてよ!?これ、あたしの布団じゃないじゃん・・・)

そういえば、天井が真っ白だなんておかしい。
だってあたしのアパートの天井は板張りなんだから。

心臓がいきなりばくばくと音を立て始めた。


ここは、どこ・・・?

そろり、と布団から上目遣いに辺りを見渡す。
見渡すまでもなく、目の前に大きな壁があった。


壁っていうか、人?

その人はあたしに背中を向けて、規則正しく寝息を立てている。







「!!!!!」
衝撃が走った。

ど、どういうこと!?
あ、ああああたし一体!?

がばっと布団から飛び起きる。
あたしがいるのはなんというかあの、世間一般で言う、
その、ダ、ダブルベッドっていうやつなわけで。
とりあえずパジャマはちゃんと着てる!うん、だ、大丈夫。
誰かの家なのかな・・・手前には扉、右側にはクローゼット、左側にはシンプルな鏡台がある。

いやそれよりも!
この、あの、隣で寝てる人は一体・・・誰なんだろう・・・
そーっと覗き込もうとしたとき、目の前の扉がすごい勢いで開いた。