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「マリッジリングを、左の薬指に付ける理由、知ってる?」


おもむろにそう口にした少女の意図を解せずに、彼は彼女を振り向いた。

彼女は気にもとめずにソファーの端に小さくなって座りながら、

窓からさす光に透かすように、幾分細い両手を目いっぱいに広げている。



「一番弱い指だから、お互いの弱さを支え合おうっていう印なんだって」


「・・・そう」


彼は無愛想にぽつりと言い、もう一度手元の書類に視線を戻す。


「そうなの」


予想通り、不服そうな返事が返ってきた。




「だからね」




後ろでソファーの背から身を乗り出す気配がする。





「結婚して?」




いつもの調子で聞き流していた彼は、頭の中でその言葉を理解した後、

珍しく驚きの表情を浮かべて彼女を振り返った。

彼女はくすくすと、子どものように笑った。










::後書き::

中途半端でごめんなさい。
マリッジリングを薬指につけるのってなんでだろって調べてみたら、
とても素敵な説を見つけたので小説にしたくなりました。
あと、一番心臓に近いから、っていう説もありました確か。
いつも麻衣を言動で振り回してるナルも、
たまにはこうして振り回されてほしいです。



2007/01/03