名前





「麻衣」

ナルの呼ぶ、あたしの名前



こみ上げてくるこの感情をどうしたらいいの



たった二文字の言葉が

たった二文字の名称が

こんなにも強い威力をもって

あたしの心に突き刺さる



ナルの持つ言葉の魔力

その静かできれいな音

「麻衣」と呼ばれるだけで

たったそれだけのことなのに

ああもう、なんだっていいや、って思えてしまう

嬉しさと、焦燥感と、衝動




その冷めた青い瞳があたしをまっすぐ捉えていて

その瞳にあたしが映っていることがもう、奇跡のようで

伸ばされる腕の温かさがまるで夢を見ているようで

ためらって、それでも腕を回さずにいられないあたしは

隣に立つことを恐れながら、

それでも

彼の全てを自分のものにしたいと思うあたしは


愚かなんだと思う

とてもあさましいと思う




でも、それでも。



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